世界の説明書
「うん、ケン君、私の目が見えなくなってから、なんだか、、男らしくて、かっこいいんだよ。前より優しくなったし。」

「男らしい、、、か。ふふふ。」
 
 少し大人じみた名子の発言に、明子はわが子の成長に驚きながらも、強く逞しく生きようとしている娘に感動し、嬉し涙がこみ上げてきた。
 きっと私なんかよりもこの子はずっと強い、私と正人の子だもの。何だってで出来ると、明子は事故の日の朝、正人がなにげなくいった一言を思いだした。私も名子に負けない様にがんばらなければと明子は自分達の運命を受け入れ、それと共に歩んでいこうと決心した。事故から一ヶ月がたち名子は幼稚園を卒業した。



 それから、しばらくして名子が小学校に上がる頃、家族は盲学校のある隣街に引っ越す事となった。隣町といっても電車でわずか三十分。正人にとっては、むしろ会社に近くなったが、幼い名子にとってはケン君と離れ離れにならなければならなく、最後まで引越しに賛成しなかった。大人にとって電車で三十分などたいしたことない距離だが小学生にとっては日本とアメリカほどにその距離を感じる。引越す前の最後の日、明子は名子をつれて、ケン君と、ケン君のお母さんと名子が失明した日に予約していたケーキ屋に初めてて行った。
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