世界の説明書
十畳ほどのあまり広くはない店内に四人がけのテーブルが二つ、二人がけのテーブルが四つ、どれも淡いピンクに白いレースを施したかわいいテーブルクロスに包まれ、濃い茶色の木製の椅子には同じように薄いピンク色のクッションが敷かれていた。店に入ってすぐ左側にあるレジの横には大きなガラスケースに入った色とりどりの大小様々なケーキが天使の枕の様にふわふわ浮いていた。明子は名子の大好きだったモンブランを注文しようとしたが、急に名子が

「私、コーヒーゼリーにする。」 

といままで頼んだ試しのない物を注文した。明子は驚いて、

「どうしたのよ。やっとここのケーキ屋さんに来れたのに。いつもここのモンブランが食べたいって、言っていたでしょう。さっきもずっとモンブラン、モンブランと言っていたのに、コーヒーゼリーなんて苦くて食べられないでしょ。」

「名子もう大人だもん。苦いのなんか平気だもん。ケン君はまだ子供だから甘い物しか食べられないけど、名子は全然平気だもん。」

「まあ、そんな事いっているとケン君に嫌われちゃうぞ。」

「いいもん、嫌われたって、いいもん、ケン君なんて嫌いだもん。、、もう、明日から嫌いになるもん。もう逢えないもん、、、逢えないもん、、、もう、、もう、、名子の事なんて忘れちゃうもん。私が見えないから、ケン君、私のこと忘れちゃうもん。もう、いいもん、、う、う、う、、、」
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