世界の説明書
 「さっきの烏はぎゃーぎゃー鳴くと言っていたわね。じゃ、よくウミネコの鳴き声を聞いてごらんなさい。」

「あ、にゃーにゃーいってる。そうか、猫みたいに鳴くから、海の猫で、ウミネコか。ね、ね、そうでしょ、ママ。」

「正解、あなたは本当に賢い子ね。私の大事な、自慢の息子よ。」

「へへ、へへへへへ、やったあ。あ、星が落ちてる。赤い星が落ちているよ、ママ」

「あら、本当ね。でもこれはね坊や、ヒトデというのよ。ほら、なんだか人の手の形みたいでしょ。」

「えー、人の手には見えないよ。これはどう見たって星だよ。だってよくママが書いてくれる絵のお星様は皆こんな形だもの。それに夜に空を見ていると、時々星がぴゅーって落っこちるでしょ、そうだ、これは流れ星でしょ。」

「そうね、確かに星ね。じゃ次からはお星様と呼びましょう。」

「うん、そのほうがかっこいいし、可愛いもの。ヒトデってなんか怖いもんね。あ、あれは何。」

「はい、はい、ちょっと待ってね。あなたは本当に好奇心旺盛で、海を気に入ったみたいね。あ、それは、、、汚いから触っちゃ駄目よ」

「ちぇ、わかったよ、触らないよ。」

汚い黒い布が浜辺で恨めしそうに干からびていた。

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