甘い記憶
また…。
「ぅう〜…また遅刻だよう〜。」

桜が通学路を走りながら、呆れたように言った。

と、その時。

「何独り言、言ってんだ?桜ちゃん。」

「は、春樹先輩!?先輩も遅刻ですか?」

「ぁあ!見れば分かるだろ!?…つーか、ずっと走ってて疲れた……どっかで休もうぜ!」

「ダメですよ!休んでたら学校、間に合いませんよ…!?」

「ダメ!!…もうムリ!」

そう言いながら春樹は、近くにあったベンチに座ってしまった。

「……やっぱり私も…もう限界〜…。」

桜もベンチに座ってしまった。

♪キーンコーンカーン…♪

遠くで学校のチャイムが鳴ってしまった。

「…あぁ〜、やっちゃった。」

桜がしょんぼりとした様子で言った。

「…しゃーねぇ!!今日はサボるか!」

「え!?…大丈夫なんですか?」

「へーきへーき!二人で、どっか行かね?」

「はぁ…今日だけですよ?」

桜にしては意外な答えだった。中学の頃からサボりを誘われたりもしたけど、どれも断っていた。

「じゃあ〜俺ん家行かない?なんもないけど、外で誰かに見つかられるよりはましだろ?」

「あっ…はい!」

『私…どうしちゃったんだろ?いつもならこんなこと、注意してたはずなのに…。先輩のことも…苦手だって思ってたのに…。私、春くんと…混同したイメージで見てるのかなぁ…?』

チリンチリン…

「あっ!落としちゃった。」

桜が慌てて何かを拾う。

「何落としたの?」

「これです!【犬のマスコット】!鈴つけてるんですよ。私の宝物なんです!」

桜が嬉しそうに言う。

「……それ…」

春樹がハッとしたかのように、何かを思い出した。



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