いばら姫




小松原さんは、異変に気が付いていない


―― フラッシュの主は
スケート靴を履き、黒い革ジャン

どう見ても日本人 ――


滑走する人影に紛れて
再び微かな、シャッターの連続音

今、レンズは俺に向いてる



横にある受付に声を掛けて
スケート靴を借りた



「 あら何?
やっぱり滑りたくなった?
どうぞ、ここで待ってるわよ 」

脇すぐに在るベンチに座り
微笑む小松原さんに、紙袋を預ける



「 …すみません
このロウソクと、
――― それ 貸して貰えますか? 」


「 え… 構わないけど 」



貸し靴には珍しく
はめられていた、エッジケースを外し
片膝立てて、靴の紐を結ぶ




「 ―― 見てろよ …パパラッチ 」



俺は腰に両手を充て
ゆっくりと氷に、足を着けた







< 647 / 752 >

この作品をシェア

pagetop