いばら姫
小松原さんは、異変に気が付いていない
―― フラッシュの主は
スケート靴を履き、黒い革ジャン
どう見ても日本人 ――
滑走する人影に紛れて
再び微かな、シャッターの連続音
今、レンズは俺に向いてる
横にある受付に声を掛けて
スケート靴を借りた
「 あら何?
やっぱり滑りたくなった?
どうぞ、ここで待ってるわよ 」
脇すぐに在るベンチに座り
微笑む小松原さんに、紙袋を預ける
「 …すみません
このロウソクと、
――― それ 貸して貰えますか? 」
「 え… 構わないけど 」
貸し靴には珍しく
はめられていた、エッジケースを外し
片膝立てて、靴の紐を結ぶ
「 ―― 見てろよ …パパラッチ 」
俺は腰に両手を充て
ゆっくりと氷に、足を着けた