いばら姫




スケートリンクが見渡せる
通り沿いの小さな店の一階

昼は喫茶店、
夜はバーをやっているらしいそこで
すかさず小松原さんは酒を頼んだ

カウンターの向こうに
底を上にしてホルダーにはめられた
何種類かの酒の瓶

腹のでっぷり出ている店主の手が
注ぎ口を捻って

黄土色の液体が、
小さなグラスに流し込まれる



何だか、消毒液みたいな香りがして

「…病院みたいな匂いですね」と言ったら

「モルトの良い酒なのに」と笑われた



――― 有り難い事に、
ここには灰皿があって
小松原さんは、そうするのが癖なのか
ライターの火を最大にして
甘い香りがする煙草を吸い込み
肩肘をついて、窓の外を見た






「 …… 別に
可愛くなかった訳じゃないのよ… 」



突然
小松原さんの独白が始まる





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