いばら姫
「 … 三年間は
こっちに渡って、あの子を育てたわ…
―― でもこの街が、私を焦らせた
何処もかしこも、…夢追人ばかりで…
ある映画のオーディション記事を見付けて
考える迄も無く飛び付いた
求められたのは"黒い天使"
東洋人は、やられ役が定番で
今みたいに主役が張れるなんて事
滅多に無かったのよ
―― 長かった髪をおかっぱにして
売れ残りみたいな
サイケ柄の生地を買って来て、
浴衣もどきを仕立てたわ
裾は膝上まで、大胆に切ってね
… あの子はピザを食べながらそれを見て
まだたどたどしい言葉で
" Mama Beautiful "って言ったの
見事合格して…
こっちでの興行的には失敗したけど
日本じゃ、かなり売れたのよ
内容もね…日本人が好みそうな
―― 孤独な殺し屋が、
羽根を生やした少女と出会って
…最初はケンカばかりなのよ
『天使なら奇跡を起こしてみろ』
『悪い事をして堕とされたから
今は使えない』とかね
でもだんだん、殺し屋はその子によって
心を取り戻して行くんだけど
街の人間がその子を、狙い始めて…
最後は結局、
男が少女を守ろうとして撃った弾が
彼女に当たってしまうの
二人で何処へ行くのか判らない様な
廃路線のトンネルに向かって…
トロッコに乗りながら、永遠を誓うの 」
「 …… 天使は
どうなったんですか…… 」
「 ―― 二人が楽しく過ごしていた時
かかっていた、楽しいBGMの中
トンネルの闇と一緒に、エンドロールよ
だから、
少女が本当に天使だったのかも
助かったのかも…
どうなったかは、見た人の心の中次第
―― 池上海平がね
"教室BAROQUE"は、この作品へのオマージュ
ハッピーエンド版なんです
そう言ってたわ… 」