いばら姫




「 ―― ハリウッド帰りの女優として

深窓の令嬢やら、厚く嘘を塗り固めて、
"小松原メイ子"は造られて行った


だけど、私はそれでも嬉しかった

―― 子供に好きな物を食べさせてやれる

気を使って
いらないよって言ってた超合金も

あの子小さい時から、
たいした物無かったのに
服は自分で選ぶのよ

だから…



……綺麗事だわね

私自身も…
芸能界の魔法に埋もれて
有頂天になって

カンヌや表彰式の赤絨毯の感触
常に当てられるスポットライトが
世界の全てに、なって行った…




――― そのうち

あの子に会うのは
警察からの呼び出しとか
… そういう事だけ


別々に暮らす様になって

たまり場で…
何か悪い事してるんじゃないかって

… そう思っても、
もう何も聞けない状態になってた


―― でもね?!
音楽をやり始めてから、あの子
凄く変わったのよ


相変わらず
何してるかは判らなかったけど
かなり頻繁に、
ニューヨークに来ていたのは知ってる…

あの子にとっては、
小さい時期を過ごした街だから
水が合うんでしょうね


"アート学校に通う"って話してくれたり
"今度バンドでデビューするよ"って…



―― ねえ

だから私は、もう昔のあの子に
すっかり戻ったんだって安心してたの!

引っ掻き回されてるって
貴方達に、どんな迷惑かけてるの?!


今更かもしれないけど
… 母親だなんて言う資格ないけど

それでもあの子が、
何かしてるなら…!! 」







――― この人は、女優だ


ごまかした所で
俺にすら見破られる
アズのへっぽこ演技とは、訳が違う

こんな風に、涙を流していても

指を強く握り、
テーブルに土下座するみたいに
頭を垂れ

―― 街の明かりの下では判らなかった
少し粉の噴いた、ノーメイクの肌

ネイルアート
爪の根元が
ボロボロに禿げていたとしても


… 上等な毛皮の下から覗く服が
多分、寝巻で


靴が片方づつ、違っていたとしても ―――






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