いばら姫




坂井さんは、目を見開いた後 ――

肩を落として、再度 首を横に振る



「 何でもいいんです! 坂井さん 」


「 …… 無理よ

一個だけ、思い付いた場所があったけど

あの子、まだ三歳位だし
覚えているはずが無いわ 」


「 いや!!

―― 俺、
幼稚園頃の事は、
何故かあんまり覚えてないけど

とっちゃと、かっちゃと、海行った事
旅館の雨樋に、スズメさ巣作ってるの
すげー覚えてて…

聞いたら『それ、三歳位だ
変な事さ 覚えてるな』って言われて… 」



「 …… そうね
私も小さい時の事、結構覚えてるけど

―― でも、無理なのよ


あの子と一緒に行った場所は
…もう、ないの 」



「 ―― 無い? 」



「 … ハドソン川に面してて

展望台を右に眺めると
エンパイアビルが、下に見えたわ

スリータワーの地下は、地下鉄と
ショッピングモール


… その横に建ってたビル
一階だったかな…

小さな映画館があって
" A Little Romance Revolver '
『黒い天使』を演った、
試写会に連れて行ったのよ … 」




―― 坂井さんは、薬が切れて来たのか
顔を少し歪めて、しきりに体勢を変え、
椅子に何度も座り直している



「 何処か、ヒルトンとかに
泊まってるんですか? 」


「 いえ
あそこは顔、割れてるし…

何処か適当な所でいいかなって 」


「 セントラルパーク前のとかは… 」



「 …馬鹿ね
あそこはホテルに見せ掛けたお城よ?

特に最上階は、部屋を買ったも同然の
永久予約してる顧客ばっか

他の部屋にしたって、一見はまず居ないし
…特別な人達しか泊まれないわ 」


「 … そうなんだ 」


「 そうよ



―― とりあえず、
…今は本当に宛てが無いから

フリーダムタワーの方に、行ってみる

… ありがとうね 」



「 あ、 俺も一緒に行きます! 」







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