いばら姫





水谷は
ポケットに手を入れ、口元からは
濃い、白い息


体は固くなり、ドクドクとした音が
耳の奥からも聞こえている俺など
意に関せずと言った風情で
鼻歌を唄っている




「 …試写会に連れて行って貰って
映画を見たんだ、俺

子供だから、リアルと映画の世界なんて
区別つかないじゃない?


―― 相手役の人、殺し屋が、
自分のお父さんだって
信じきっちゃってさ…

Boardさんが、
Juriaさんと一緒に居たのを見た時
泣いて抗議したんだよね



結局、Boardさんは、あの映画一本で
俳優を辞めてしまって
夫婦であそこの店をやってた


よく内緒で会いに行って…
日本に戻る迄は、
凄く可愛がって貰ってたよ



―― ルウが昔、何かの記事を見てね
彼がビルの倒壊に巻き込まれて
亡くなっていた事を知って、
それでたまに
Juriaさんに会いに来てたんだ

今日は、近く通ったから
たまたま寄ったんだけど…



―― なんだろう
岡田君は人探しの才能、あるのかもね 」




「 ――… ベースを、灰谷が見付けた 」


「 あれ… 早いなあ

一応、君達に見付かるまでひたすら
ベース持って歩いてくれとは頼んだけど 」


「 …… 何で

何でそんな事ばかりする?! 」





「 …あいつ、
あのベースをルウ代わりみたいにして
縋ってるみたいな部分、あったでしょう

――気持ちは充分わかるんだけど… 」








「 アズの…腹


青山を
―――襲わせたのはお前か…? 」






「 …ルウが家を出ていって

何処に行ったか…… 必死に探したよ

見付からなくて…本気で焦った


それなのに、ライヴハウスで偶然会って…

―― ルウの事を何も知らず
無責任に一目に晒してる
誰も何も判ってない奴らに頭に来た――


でも、
奴らの経歴、素行、人間関係調べたら
本当に普通の大学生で


……安心してたのに 」







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