いばら姫



「… 自分は何も捨てないで
お気に入りの物みたいに
私をその中に入れようとしないで」


―――― 言葉に詰まる


「じゃ…俺がこっちに来れば
おまえは気に入るのか?!」


「私が居なくても、淳は生きて行ける」



「―――何だよそれ…

あいつだって…
"青山"だって、おまえが居ない間に
ちゃっかりバンド組んで
しっかり生きてるじゃねえか!」


「……淳
やっぱり淳は 私から離れた方がいいよ

…淳はすごく優しい人なのに
私と居ると、
言いたく無い事
たくさん言っちゃうでしょう…?」


「それは………!!

…それはアズが好きだからだ!!

―― チャットじゃ顔が、見えないから…

顔を見ると俺…
言いたい事や思いが良い悪い関係無く
一気に生まれて来て…

何話していいか判らなくなって
その時一番強く思った事を
思い切りぶつけてしまう…

前にも言ったろ…?!


――どうしていいか
わからなく…なるんだ……」



「……淳を好きなのは本当だよ」


「あ… 」


「―― 家族が居る人って
根底に揺るがない何かがあって
それが自然な強さになる

淳にはそれがあって、多分
容姿にも自信があるよね


それは私には無いものだから凄く憧れる

離れた私に
"バーチャル海デート"させてくれたり
ゲームでの思い切りの良さとか


…太陽みたいで
いつも窓を、開いてくれる…

一緒に、本物の空と海を見たいって
ホントに、思った」



「……ならいいだろ?!
歌…やめろなんてもう言わない

だけど、離れているのは嫌だ…

ミュージシャンでも居るじゃないか
沖縄からとか…
そういうのなら、全然構わないから…!」



「――― 淳
淳は私に、"対等"を教えてくれた

前衛、後衛は
優劣じゃなくて、『役目の違い』だって

今の話は、かなり譲歩してるだけで
私の意志は、無視してる


――淳は私の事『姫』って言ったけど
姫はいつでも
『王子』に従わないとダメ…?」



「…………」








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