三度目の指づめ
『ンだよ。その目は…』
そこに居たのは紛れもなぃ…兄だった。
爆裂する脳内…
痙攣する鼓動…
悲鳴すら出ない。
汗臭い刺繍を漂わせる兄の胸板を思い切り突き飛ばした。
突き飛ばしたのは…あたしなのに、バウンドしたのは、あたしだった。
跳ね返った反動でベットに倒れ込む。
本能的に…危険信号を感知した。
“逃げないと”
危機感だけが先走り両足に力が入らない。
這う様に四つ這いになる。
とにかく、非難したかった。
誰かに救助を求めなかった。
救出を待った。
望んだ。