三度目の指づめ


そんなあたしを見下す様に口元を吊り上げた兄は、まるで、赤子が這い回るのを背後から見守るみたく追い詰めて来る。


そして2・3m進んだ所であたしは無情にも扉にぶち当たった。
ドアノブは遥か頭上…

今の四ん這いではどうする術すらない。
目の前を真っ暗な絶望がベールを下ろした。


『おぃ。もぅ終りなのかよ。おらおら、逃げねぇとヤッちまうぞ。』


薄ら笑うかの様に兄はあたしの腰を足の踏み台変わりにしてけちらして来る。

もう、体全体が地震みたく震えが止まらない。
鼓動は爆発する。


滝の様な汗が、冷たいはずの床から温度を奪った。

あたしはただ一心不乱に中腰になりドアノブに全体重を傾ける。
そぅして、この悪魔から逃れる唯一の策を取った。
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