大人になれないファーストラバー
高校2年になってから、まだ曖昧な症状だけれど、少しずつ記憶が衰え始めた気がしてる。
ほんとに時々、一ヵ所だけすぽんと抜けてしまったように記憶が途切れることがあるのだ。
一日の出来事を日記に記すようになったのは、始めてそんなことがあってから。
怖かったんだ。
自分じゃない他の誰かに記憶を操られてるみたいで。
それから、一分一秒誰かが漏らした囁きまで、全部全部忘れることがないように。
こと細かく一日のことを記すようになった。
苦しくなる胸を服の上からぎゅっと押さえて。
窓の外で顔をくしゃくしゃにして笑ってる咲之助と阿宮を見つめた。
こうして見てると、咲之助はほんとに普通の男の子なんだなって思う。
普通に背も伸びるし。
普通に恋だってする。
普通に高校を卒業して。
そして普通に大人になっていくのだろう。
だけど、大人になれなくなったあたしがそばにいたら、咲之助にはそんな風な"普通の未来"がないかもしれない。
今まで依存しまくりで、当たり前のようにそばにいた咲之助。
けどもうそうは行かなくて。そろそろ離れないといけない気がしてる。
"いつまでも子どものままなんて無理なことだった。"
と。
いつかの流星群の夜を否定するように、あたしは心のなかでそう呟いた。