大人になれないファーストラバー
今日も日記を書く時に、漏らすことなく記入出来るよう、瞬きもせずに二人を眺めていると。
電車が出発する笛の音が聞こえた。
慌てて電車に駆け込んでくる咲之助たち。
あたしは、"ここだよー"なんて居場所を知らせることもせずに、椅子に深く座り直した。
「蕾ー」
「名取ー」
と。数えられるくらいしか乗っていない電車内は静かで、あたしを呼ぶ二人の声は目立っていた。
「つか、名取乗っていなくはないよな?」
と、阿宮の声が近づいてきた。
探されてるんだと自覚すると、なんだか隠れたくなってくる。
「乗ってるよ。乗り込むとこは見たから」
続いて咲之助の声も近くなった。
いるのに返事してないことがバレると何か言われそうなので。
阿宮がこの場所を覗くか覗かないかのとこで素早く目を瞑った。
取りあえず、寝てるふり。
「あ、いたいた」
咲之助に呼びかけるような阿宮の声が聞こえる。
「なんだ、寝てんのかよ」
呆れたように言った咲之助。
咲之助がからかったから怒ってるんだ、と言いたかったが、やめておいた。