大人になれないファーストラバー
狸寝入りを決め込んで、ぴくりとも動かずにいたせいでなんだか腰が疲れて。
もう一度座り直そうと座席に手を着くと。
ふいに何かに触れた。
見ると、そこには放り出された咲之助の手があった。
相変わらず深爪ぎみの爪が目に入って。
手のひらを見ると、小指の付け根あたりに小さなホクロがあった。
小さい頃はもう少し濃かった気がするが、今ではそれはごく薄かった。
おもむろに、開きかけのまま動かないその手に自分の手を合わせてみる。
手のひらでぐっと押して指を開いて。
半ば強引に重ねた。
咲之助の指の第二関節には及ぶものの、断然あたしの手のほうが小さい。
汗ばんで来てもその手を離さず、じっと観察していたら。
咲之助の頭がこっちに倒れてきた。
「ん」
声がして、はっと手を離すと。
あたしの肩に寄りかかる寸前で咲之助は目を覚ました。
「あ、わり」
って言うと大勢を立て直して、また目を瞑った。
が、またすぐに目を開き、
「弁当、渡しとく」
と、カバンの上にあった袋を取って差し出してきた。