最愛の人


その後、秦さんと健二さんは時間も遅いからって言ってすぐに帰っていった。



帰り際に健二さんに言われたことがある

『いきなりこのような事を申して申し訳ありません。でも、秦さんは本気ですよ。雰囲気はしっかりしてないので頼りないですが、それは見かけだけです。あの人は自分の事を信じて付いてくる人を絶対に裏切らないんです。だから信じて損はありません。』

『………』


『まぁ、断ったとしてもあの人は初美様が了承するまで諦めませんので気をつけてください。』

何も答えなかったあたしをそう言って脅すんだよ!
しかも、秦さんと同じように不適な笑みを浮かべてさぁー。



そんな事言われたってあたしの気持ちは変わらない。
一人で生きていくの。



もし、信じて付いていったとしてもすぐに捨てられるだけ。
だって、赤の他人だもん。捨てるのは簡単のことだよ

誰も真剣にあたしのことを心配してくれる人なんていないんだから……




それに面識がないのにいきなり引き取りたいなんておかしいでしょ?
絶対何かの気の迷いだよ。
それか、別に何らかの目的があるとか…。


まぁ、目的が何にしろこの話を受けるつもりはない。
断り続けてれば諦めてくれるだろう…って簡単に思ってた。



現実はそんなに甘くない。






毎日のように訪ねてくる秦さんと健二さん。


最初はちゃんと断ってたけど最近では無視することが多い。
だって、もう3ヶ月近くこの状態が続いてる。
いい加減諦めてほしい。


児童相談所の高橋さんは1ヶ月で諦めたらしく、最近では学校に来ない。
電話や担任の先生から気持ちの変化がないか聞かれるぐらいだ。


あたしの思ったとおり。
あたしのことなんて真剣に考えてない。仕事だから仕方なくしてるだけ…。



秦さんもきっとそうだ。
仕事のためってことはないと思うけど、何か目的があるんだと思う。


そう心の中で思ってるせいで中々信用ができない。
3ヶ月もあたしの所にきてくれてる。しかも毎日…。もう信用してもいいと自分でも思う。



でも信用して裏切られるのが怖い。
捨てられるのが怖い。


だから、素直になれないのー…



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