最愛の人
「お帰り、初美ちゃん。」
「…ただいま」
バイトから帰ってくるといつも通り玄関先に立っている秦さん。
「…どこか調子悪い?体調悪いんじゃないか?」
「どうしてそう思うの?」
「声が違う。それにすごく疲れてるみたいだからね。バイトきついんじゃない?少しは休まないとダメだぞ」
声…?
自分の声なのに違いがわからない。
でも、体調が良くないのは事実。
季節の変わり目は風邪を引きやすい体質らしいあたしは案の定風邪を引いているみたい。
喉が少し痛く咳が少し出るぐらいだからそんなには酷くない。
それと疲れてるのも事実。
バイトがきついんじゃなくて、バイトと勉強の両立が辛くなり始めてた。
うまくいかない事だらけでイライラが募る。
周りを見ると勉強やバイトなんかしないで平気で遊びほうけてる人ばかり。
それを見てさらにイライラが募る。
爆発寸前のイライラをどうやって解消していいのかわからない。
だから、つい秦さんにあたってしまった。
熱があるかをおでこに手をあて確認している秦さんの手を払いのけ
気がつけば叫んでた。
「触らないで!…もういい加減諦めて。秦さんだって本気であたしのことを心配してるわけじゃないんでしょ?何か目的があるはずでしょ?わかってる。誰もあたしのことを真剣に考えてくれる人はいないし、心配してくれる人だっていない。あたしは1人ぼっちなの。だからあたしは1人で生きていくって決めた。…もうほっといて!!」
一気にあふれ出した言葉。
それと共に涙も溢れ出してあたしの視界が歪んでく。
止まらなかった。
自分がひどい事を言ってるってことはわかってる…でも一度口から出てしまうと途中で止めるのはあたしには不可能だった。
秦さんがどんな顔をしてるのかわからない。
だからといって見る勇気もないから、そのまま家に入って一気に階段を駆け上り自分の部屋に入るなりベットに倒れこんで泣き崩れた。