危険な誘惑にくちづけを
カラダから始まる略奪愛、とか。
無理やり乱暴されても。
一度カラダをつなげた相手なら、好きになる、なんて。
アヤしい小説のお話みたいなことになるなんて、とても思えなかった。
手始めに、わたしの唇から奪おうと、顔を寄せてくる佐倉君が怖くて……怖くて。
思い切り、彼の胸を押して抵抗したのに。
佐倉君は、びくともしなかった。
ここが、人通りがほとんど無い、とはいえ道だから。
誰かが通りかかれば、佐倉君は、キスを止めてくれるかもしれなかった。
マナーモードにしていない、わたしの携帯が、紫音からの着信を受けて派手に鳴りだせば。
佐倉君の気をそいでくれるかもしれなかった。
けれども。
どんなに祈っても、現実に、そんな都合よく助けなんて来るはずもなく………。
佐倉君は、ほほ笑むと、わたしにくちづける寸前まで唇を寄せてささやいた。
「……ここから先は、春陽ちゃんからオイラにくちづけて?
春陽ちゃんが、自分の意志で、彼氏を裏切るんだ……」
「……!」
佐倉君は、何を言ってるの……!