危険な誘惑にくちづけを
 ……本当の意味で、薫ちゃんは。

 紫音の病気のお医者さんだったのかも……しれなかった。

「ああ、でも~~
 ウチで、バイトの時は~~
 もう、ほとんど治ってましたよ?
 無理をしなければ、フツウの生活が出来るって言ってましたし~~
 今、彼女の君が気がつかないなら、きっと~~
 ちゃんと、治ったんですね~~」

 驚いたわたしを、取りなすように先生は、話してくれたけど。

 問題はそんなに簡単じゃない。

 そんなに大事なコトを黙っているなんて。

 わたしは……紫音に、信用されてないのかな?

 年がだいぶ離れているわたしに話しても、意味ないと思っているのかな?

 しかも。

 そんな、大切なコトを、気づいてあげられなかった、わたしって、一体……!

 ……今まで、紫音のすぐそばにいた、って思っていたのに。

 全然、全く、違うじゃない………!


「春陽?」

 心配そうにクビを傾げる風ノ塚先生と水島に。

 なんとか、大丈夫、と手を降って。

 わたしは、立ち上がるコトに決めた。



 わたし。


 紫音のこと。


 もっと、ちゃんと、知りたいよ……!


 
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