危険な誘惑にくちづけを
「え~~なんで?」

 わたしも、笑って聞いたら。

 佐倉君は、ドキッとするような目でわたしをみて、言った。

「だって。
 そしたら、春陽ちゃんと、間接キスが出来るっしょ?」

 キ……キス!

「や、やあね!
 なに言ってるのよ、佐倉君ってば!」

 思いのほか、真剣な佐倉君の顔が、まともに見られなかった。

 どうしていいのか、わからずに、ごまかすように、ジュースを一気にのんだ、そのとき。




 ……世界が、回った。



「あ、あれれれ……?」

 座っているはずなのに、それでもちゃんとバランスをとるのが難しかった。

 目がぐるぐる回って、急に、なんだか眠くなる。



 そして、とうとう。


 力つきて、ぽて、と佐倉君の胸の中に倒れ込んだ。

「あ……っ!
 ご……ごめ……ん!」

 自分が佐倉君を、押しているのに気がついて、あわて起き上がろうとしたら。

 佐倉君は、そのまま、わたしをそっと抱きしめて言った。

「春陽ちゃん、眠いの?
 オイラ、全然迷惑じゃないから、そのままよりかかってて、いいよ?」

「……ん、でも……」

「それとも、家に帰る?
 連れてってやろうか?」

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