不器用なLOVER
「よぉ、遅かったな透弥。今から晶ちゃん達とカラオケお前も行くだろ?」

二人の会話を固唾を飲んで見守る生徒達…。

透弥さんはそれには答えず朋弥さんから私を離して、

「今日から体育祭と後夜祭の準備で忙しくなるから」

三人に向かって、

「晶は僕が借りてくけど構わないよね?」

眼鏡を指で押し上げた。

呆気に取られて固まったままの、彼女達の返事を待たずに、

私のリュックを担ぎ、手を引いて教室を後にした。

「残念。晶ちゃん行かねぇなら、俺もパス…ゴメンね?」

ドアが閉まる直前に朋弥さんの声を聞いた。

無言で歩き続ける透弥さんの手を引いて立ち止まった。

「怒ってる…の?」

睫毛を伏せ影を射し、

「晶にじゃないよ」

「じゃあ朋弥さんに?」

「朋弥にでもない…」

透弥さんと視線が合わなくて、

しゃがみ込んだ。

目が合って見開いたけど、

「冷静に振る舞えなかった自分」

すぐそらされた。

立ち上がって胸に顔を埋める。

「私は…嬉しかったよ?」

肩に手を回し

「ゴメン…」

抱き締められた。

「カラオケ、行くの?」

「行かないよ。透弥さんと一緒に居る」

抱き締める腕に力が込もる。


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