不器用なLOVER
会長室に入るなりパソコンに向かい合ってしまう透弥さんに、

「透弥さん…10位は無理だった」

私は届かないだろうと思いながら呟いた。

「みんなのね最低点でも…私には最高点より上だったの」

上履きを脱いだ足をソファの中で抱える。

「頑張ったのに…透弥さんの期待に応えられなかったよ」

膝に額を付け、

「透弥さんの勉強邪魔してまで、教えてもらったのに…」

溜め息を吐く。

「私のこと呆れてるよね?」

【でもさ、透弥ってバカは嫌いじゃん?】

「バカは嫌いなんだもんね…」

朋弥さんの言葉が胸に刺さって、抜けない。

「ふっ…」

気付かれちゃいけないのに鳴咽が漏れてしまう。

髪を撫でる優しい手に顔を上げる

「一人で泣かないでって…前に、言わなかった?
晶は、そんなことも忘れるぐらいバカな子なの?」

頬を伝い落ちる涙を指で掬い、

「朋弥の言ったことは覚えてて、
僕の言ったことは忘れるの?」

【人の気持ちを考えられないのが問題あると思う】

「2つ目のお願いは…僕が言ったことを思い出すこと」

思い出さなくても憶えてるよ。

朋弥さんが言ったからじゃない。

透弥さんのことだから覚えてるの

「僕のことなら心配いらない。
今回も間違いなく首席は保持したはずだから」



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