不器用なLOVER
何度目かのチャイムの後、

「ご気分を悪くなされたんですって?」

携帯をパチンパチンとスライドさせて近付く冷たい微笑みは、

「約束通り宮原様にはお会いになってないようで安心しましたわ」

椅子に座り足を組み

「貴方には感謝をしなくてわね。先程宮原様に誘われてこれからデートですのよ」

勝ち誇ったように笑って、

「悪く思わないで下さいね?貴方の真似をして会長室にお邪魔しただけですのよ?」

頬を上気させて帰って行った。


取り残された私は信じられずに、ただ彼女が出て行ったドアを見つめていた。

「嘘…」

透弥さんが彼女をデートに誘うなんて…。
私を好きだって言ってくれたのに…。
必ず好きだって言わせてみせるって言ってくれたのに…。
キスしてくれたのに…。
優しく抱き締めてくれたのに…。

全部なかったことにする気なの?
そんな簡単に忘れられるの?

私が、他の男に襲われたから…
私が、汚れてると思ってるから…

だから彼女なの?

彼女ならいいの?

彼女は襲われてないから?

組んだ足は細くて長くて綺麗だったけど…。

そんなことで彼女を選ぶの?

ヤだよ透弥さん

行かないで

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