不器用なLOVER
気付くと私は走り出していた。

「あっちゃん、バッグ持って来たよ。帰ろ?」

前から来た衣里が私のバッグを掲げる。

「走ったりして大丈夫?」

登喜子が駆け寄るが、

「ゴメン急いでるの」

その手を制止、
バッグを受け取るが、

「待って。何慌ててるか知らないけど…

真姫の引き留める手を振りほどき

「ゴメンね。私どうしても行かなきゃいけないの」

走りながら振り返り謝る。

透弥さんを行かせたくない。

彼女だけには渡さない。

例え私を選んでくれなくても…。

人付き合いが苦手な透弥さんを、私が守らなきゃ。

自分がモテることにも気付かないくらい鈍感で、

ホントは優しくて、
いつも助けてくれて、

笑い方も不器用で、

大好きな透弥さん

誰にも、渡さない


息を切らせ辿り着いた会長室。

ドアノブをカチャカチャ回すが、

「鍵締まってる…」

開かない。

どうしよう…。
学校の外に出ちゃったらもう探せないよ。

「あれ?里中さん?」

生徒会室のドアから出てきた人に声を掛けられた。

「あっ副会長さん」

「どうしたのこんなところで?」

優しい笑顔で私を見る。

「えっと、と…会長は?」

「ん〜、今日は買い出しに出てるはずだけど…」

副会長に透弥さんの行きそうな店を教えてもらって、

「ありがとうございます」

お礼もそこそこにまた走り出す。

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