不器用なLOVER
副会長さんに教えてもらった店は、学校の近くで一番大きな量販店で五階まである。

上から順番に降りてくるのが通常の買い物ルートだろうから、
ここは逆に下から上がって探した方が早いかもしれない。

一階から通路の隅々まで歩いていく。

こんな時背が高ければ陳列棚越しでも見付けることが出来るのだろうか?

逆に透弥さんの背は恐らく陳列棚の頭一つ分は高いだろうけど…、

私が棚と棚に挟まれてたら結局見付けることが出来ない。

姿を確認出来ないまま、
時間だけが過ぎていく。

「この階で最後だ」

エスカレーターを降り、
気合いを入れ直す。

玩具や雑貨がメインとなった階だけあり、子どもたちが所狭しと走り回る。

夢中になった子どもが一人、前も見ずに駆け出して、

私はそれを避けるように、
壁際に寄る。


あっ

目の先には、

下っていく

ガラス張りのエレベーター

彼の腕に手を絡ませ

寄り添うように立つ二人の姿

「透弥さん」

吹き抜けを囲む柵のポールに身を乗り出して食い入るように見つめる。

「お客様危ないですのでお止め下さい」

店員の言葉も耳には入らず、
二人の行方を見守る。


< 42 / 315 >

この作品をシェア

pagetop