不器用なLOVER
放課後

会長室のドアをノックすると程なく、

扉が開かれた。

「いらっしゃい」

透弥さんが私を見下ろし微笑む。

ゆっくりと歩を進め、完全に体が圏内に入る。

扉が閉まる音を背中で聞いた。

「お邪魔します」

ピョコンと頭を下げる。

一ヶ月も経ってないのに、凄く懐かしく感じた。

クスっと笑い透弥さんはデスクに着く。

私は荷物をソファに置き透弥さんに近寄った。

ブラインドタッチでパソコンを操作する姿に見惚れる。

「見過ぎだから…」

手を止めることなく少し眉を潜めながら言われて、慌てて画面に視線を移した。

「何作ってるの?」

「体育祭のプログラム」

プログラムと言われてもう一度覗き込むけど、

第3種目9時15分スタート
3年生100m走15レース
所要時間30分(入退場込)

「そんなことまで透弥さんがするの?」

体育祭の構成だよね?

驚いて上げる声に振り返り、

「そんなことって行事の運営は僕の仕事って言ったよね?
実行委員会で略決まったことをまとめてるだけだから」

怪訝な顔をした。

何か言わなきゃと口を開き掛け、
ドアをノックする音に阻まれる。

「は〜い」

内心胸を撫で下ろし、
返事をしてドアに向かう私を、透弥さんは呆れて見ている。

背中に痛い視線を感じつつ扉を開ける。

「失礼します」

深く礼をしていた副会長が顔を上げた。

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