ラビリンスの回廊


玲奈の時間が止まった間、それはヴァンも同じだったようで。


「イシュト…様……?」


予想していなかったイシュトの行動に、見開いたヴァンの目が釘付けとなる。


そしてヴァンの脳に『イシュトが謝罪した』と到達するや否や、

「イシュト様……っ」

心が張り裂けるような悲鳴混じりの声が、小さな囁きのようであったにも関わらず、辺りに響き渡った。


我に返った玲奈が動揺を見せ、

「ちょ……なんだよっ……」

と落ち着きなくソワソワと視線をふらつかせると、ルクトが助け船を出した。


「まーまー。

レイナちゃんは優しいから、部下の行動に責任を感じるイシュトくんを許してあげるよね?」


ね?と念を押され、反射的にウンと素直に頷いた玲奈に、ルクトは『よくできました』と花丸笑顔を見せた。


< 141 / 263 >

この作品をシェア

pagetop