ラビリンスの回廊
玲奈の時間が止まった間、それはヴァンも同じだったようで。
「イシュト…様……?」
予想していなかったイシュトの行動に、見開いたヴァンの目が釘付けとなる。
そしてヴァンの脳に『イシュトが謝罪した』と到達するや否や、
「イシュト様……っ」
心が張り裂けるような悲鳴混じりの声が、小さな囁きのようであったにも関わらず、辺りに響き渡った。
我に返った玲奈が動揺を見せ、
「ちょ……なんだよっ……」
と落ち着きなくソワソワと視線をふらつかせると、ルクトが助け船を出した。
「まーまー。
レイナちゃんは優しいから、部下の行動に責任を感じるイシュトくんを許してあげるよね?」
ね?と念を押され、反射的にウンと素直に頷いた玲奈に、ルクトは『よくできました』と花丸笑顔を見せた。