AEVE ENDING
それでも相変わらず涼しげな表情のまま雲雀は私を見ている。
その顔を見ると、いつも泣きたくなって、そうして勢いを削がれるのだ。
「…私のことなんかなにも知らないくせに。私が今まで味わった痛みも悲しみも怒りも辛さも、なにも知らないくせに」
知らない。
雲雀は、知らないんだ。
(…だから私を、選ぼうとしてくれているだけ)
「私」だからこそ、選んでくれた。
―――でも、私だからこそ、選んではいけなかった。
その血統は絶対だ。
揺るがない、美しい血の連鎖。
「…もう、やだ」
徐々に鋭くなっていく目付きに、圧倒される。
威圧感に心臓が潰れそうになり、思わず後退れば、すぐに壁に阻まれた。
視界は鮮明ではない。
ただもう、震える喉は止まらなかった。
「もう、私のことなんか忘れろよ…!」
だって私は、選ばれなかった。
どれだけ私があんたに焦がれようと求めようと、叶わない夢に終わるのだ。
だから、言わなきゃ。
雲雀は、私といても救われない。
―――だから。
「…あんたは、アナセスと結婚して、アナセスとの、こどもを作って、父親になって、そして、…っ幸せになるんだ」
私にはきっとできないことだから、だからどうか、せめて、と祈るよ。
だからもう、私のことなんか忘れて欲しい。
こんな不様な女のことなんか、もう、忘れてよ。
『お前は修羅に、選ばれるべきではなかった』
それでもこんなに、すきなのに。
―――バキッ。
空気が耳を裂く音がした。
同化するように凭れていた壁を、顔のすぐ真横を殴られたのだと理解して、すぐ。
伸びてきた腕に剥き出しの体を無理矢理抱き上げられ、部屋を闊歩された。
当然、肩に担がれながら抵抗するが、雲雀の細腕はびくともしない。
(やめろよ、)
皮膚にそれが直接触れる刃となって傷を付けていくように、雲雀が怒っているのは明白だった。