AEVE ENDING





それでも相変わらず涼しげな表情のまま雲雀は私を見ている。

その顔を見ると、いつも泣きたくなって、そうして勢いを削がれるのだ。



「…私のことなんかなにも知らないくせに。私が今まで味わった痛みも悲しみも怒りも辛さも、なにも知らないくせに」


知らない。

雲雀は、知らないんだ。



(…だから私を、選ぼうとしてくれているだけ)



「私」だからこそ、選んでくれた。

―――でも、私だからこそ、選んではいけなかった。



その血統は絶対だ。

揺るがない、美しい血の連鎖。




「…もう、やだ」

徐々に鋭くなっていく目付きに、圧倒される。

威圧感に心臓が潰れそうになり、思わず後退れば、すぐに壁に阻まれた。

視界は鮮明ではない。

ただもう、震える喉は止まらなかった。



「もう、私のことなんか忘れろよ…!」

だって私は、選ばれなかった。

どれだけ私があんたに焦がれようと求めようと、叶わない夢に終わるのだ。


だから、言わなきゃ。

雲雀は、私といても救われない。

―――だから。



「…あんたは、アナセスと結婚して、アナセスとの、こどもを作って、父親になって、そして、…っ幸せになるんだ」

私にはきっとできないことだから、だからどうか、せめて、と祈るよ。

だからもう、私のことなんか忘れて欲しい。

こんな不様な女のことなんか、もう、忘れてよ。




『お前は修羅に、選ばれるべきではなかった』




それでもこんなに、すきなのに。









―――バキッ。


空気が耳を裂く音がした。

同化するように凭れていた壁を、顔のすぐ真横を殴られたのだと理解して、すぐ。

伸びてきた腕に剥き出しの体を無理矢理抱き上げられ、部屋を闊歩された。

当然、肩に担がれながら抵抗するが、雲雀の細腕はびくともしない。


(やめろよ、)

皮膚にそれが直接触れる刃となって傷を付けていくように、雲雀が怒っているのは明白だった。





< 1,077 / 1,175 >

この作品をシェア

pagetop