AEVE ENDING






(頼むから、構うな)

これ以上、これ以上長く一緒にいれば、あやふやな虚勢などすぐに消えてしまう。

隠す様もなく露になる隙のない激情に、心底から雲雀の顔を見たくないと思うのに。


「っ、!」

それは叶わなかった。

朝起きたままの乱れたベッドに振り落とされて、反射的に顔を上げる。

直に肌へと当たるシーツは、冷たかった。


「…っ、」

両腕を掴まれた。
捻るようにシーツに押し付けられて、胸にかかる圧迫感に息を吐く。


「っ、」

その息を丸ごと吸い込まれて、歯が当たる音と舌が触れる音に涙が出そうになった。

乱暴に掻き抱かれた腰の、そこに引っかかっていたスカートを剥ぎ取られ、暴れる私を、その体で圧し潰して。



「―――…っ、」

肋骨が折れてしまいそうな重圧に、息が詰まる。

咬みきられた唇の端から血の河を描くように下がった雲雀の唇が、首筋の傷を捉えた。


―――こわい。

体に残る傷という傷に歯を立てられて、傷みに跳ねる体を拘束されて、もう、遮るものなんかひとつも、なくて。


いやだ。


「…っ、」

こわい。

こわくてこわくて、声すら出ない。

あんなに見たくなかった雲雀の表情が見えないことが、今は、心臓が停まりそうなほど怖くて、でも、泣くなんてできなくて。



(だってわたし、こんなに)


嬉しいのだ。

痣が残ってしまいそうなほど強く捕まれている腕が喜びに軋む。

その白い歯が皮膚に当たる度に、肉が歓喜の声を上げる。

雲雀が触れる度に、浄化されて汚染されて、見知らぬ世界へ融けてゆく。



「…、」

音が、聞こえない。

耳に届くか細い声は、私の泣き声だろうか。

雲雀の鼻先が項を擽る。

どうしたって、抑えられないというように。



「…、」

雲雀の呼吸が荒かった。

私の嗚咽に喘ぐように、息が続かない。

雲雀のシャツが皮膚に圧し潰されて、皺になって、もう二度と取れない傷のように。

雲雀はまだ、なにも口にしなかった。





「…や、だ」

嬉しい。

嬉しい嬉しい嬉しい。

嬉しい、のに。




「…ぅ、あ」

撫でられる脇腹に鳥肌が立つ。
噛みつかれる乳房に息が詰まる。
抱え上げられるように抱かれた脚が、ひきつる。



―――喰われていく、気配。








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