AEVE ENDING
そうして真醍夫婦が鐘鬼を引き連れて北の島へ戻って、すぐ。
「兄様…」
真鶸が雲雀に抱きついた。
桐生の死を悼む優しい子は、倫子の目には真っ白に映る。
アナセスも、ロビンだってそうだ。
眼球を焼き尽くすまでに穢れのない存在は、いつだって倫子を影に追いやるのに。
(…あの赤ん坊なんてもう、私を殺す狂気になりうるかもしれない)
『腹の中から徐々に腐敗していって、最後には苦しんで死ぬんだよ』
以前、暗闇の真っ只中にいた倫子に、奥田が捧げた予言。
真実であるなら、この体が子を産み出せないことに感謝したいと思った。
きっと産まれた子は、そんな母親を忌み嫌うだろうから。
「…きれいな人だったね」
真醍が連れてきた女性は、洗練された女のそれだった。
聞けば、真醍の護衛の任に就いていた女性だという。
妊娠を機に足を洗ったらしいが、その話に頷けるほどの芯の強さがあった。
柔らかく暖かい、けれど突き刺すことができる、強い人。
(そんな人の前で泣くなんて情けない)
見上げた薄雲の彼方で、世界は今日も息づいているのに。
(私、なんでこんなに空っぽなんだろ…)
桐生を失ったことでなにが自分の体にもたらされたのか、わからないまま。
中身の詰まっていない体を無気力に横たえて、苦しみなのか虚無感なのか、訳のわからないものに苛まれている。
(彼女の「大丈夫」、が尚更)
『―――大丈夫だ』
安堵と不安が胸に湧いて。
『ひとりにはならない』
(そしてそのただ一人を、汚い私は穢してしまわないだろうか)
この先も触れ続けて、雲雀を殺してしまわないだろうか。
彼が望まない形で、まさか。