AEVE ENDING
―――潮の音が耳を擽る。
周囲はごつごつとした岩で囲まれ、その姿は天上をも覆っている。
足元には柔らかな砂の感触。
スニーカーが沈む度に膝を曲げて足を浮かせても、また懲りずに沈んでしまう。
それもこれも、全部こいつのせいだ―――。
「っちょっと、…待、て」
腰の両側を両手で拘束され、首筋に噛み付いている顔に抗議する。
小さく並びのいい歯が鎖骨に張る薄い皮を食んで、強く吸う。
場所が場所だけに搾られるような痛みを感じて、倫子はその頭を横殴りに叩いた。
「……痛い」
やっと歯を引っ込めた頭は、ゆっくりと顔を上げ、次には倫子の頬に噛み付いた。
「…っだぁあ!やめろ!」
バシーン!
先程は多少の手加減はあったが、今度は容赦しなかった。
真横に弾け飛んだ体が羽織っていた半脱ぎのシャツから綺麗な胸が垣間見え、その肌の白さにゾッとする。
しかし半脱ぎなのは雲雀だけでなく、倫子もだ。
しかもスカートは持ち上がり、太股は丸見え。
足首には下着が引っかかっている。なんて酷い格好だ。
「…離れて見ると、そそる」
「つーかパンツ砂まみれなんですけど」
「もう履かなきゃいいよ」
「そんなわけにはいかんだろ」
最近は、触れることにも慣れた。
…触れられることにも。
そして所構わず発情する雲雀に倫子はひたすら流されるまま流されて、たまにこうしてその流れをぶった切る術を覚えた。
そして今日は稀な成功例だ。
―――ここは、西部箱舟の目の前に広がる砂浜。
そして更に絞れば、この岩場は、以前東部の生徒達にアミが連れ去られたあの岩場だった。
「この前、知り合った植物学者さんさあ」
岩に凭れて立つ倫子の足下に跪き、濡れた太股を拭いながら下着を履かせている雲雀を見下ろして、倫子は口を開く。
言えば、雲雀はなんともおかしな顔をした。
「あの嫁とこどもの自慢しかしない人?」
「そうそう、街の居住権を放棄して、「外」の緑地化活動をしてるって言ってた人。で、愛妻家で子煩悩の人」
スカートに埋もれる雲雀を見下ろし、にやり、と倫子は笑う。
この角度にも慣れたんだから、大した根性だと自分でも褒めてやりたい。