AEVE ENDING
街へ初めて出てからどれくらい経っただろうか。
深緑の葉が降り注ぐ中、雲雀と改めて「約束」を交わしたあの日を、きっと一生忘れないだろう。
そして倫子の「やりたいこと」を実現するために、ふたりは箱舟の目を盗んでは街へ繰り出していた。
何をしているかは、二人だけの秘密にして。
「荒野での育て方は教えてもらったけど、まだまだ改良の余地はあるだろうね」
倫子はにこやかに笑みを浮かべると、雲雀に礼を言って整えられたスカートで砂浜に尻餅をついた。
「その土地土地の気温や天候も考慮しないと、発芽までこじつけるのも難しいよ。その風土に合わない植物だってあるしね」
その隣に腰掛けながら、雲雀は岩の天井を眺めた。
ただでさえ薄暗い空が遮られて、この場所はもっと暗い。
その中で淡く発光する雲雀の横顔は、相変わらず綺麗だ。
「研究所で新しい種が改良されたって言ってたね。それ持ってまた来週には外に出て種を植える旅をするって」
そう言って笑う倫子は、雲雀に倣うように岩の間を縫って空を見上げた。
グレーに発光する雲の流れが早い。
ずっと眺めていると、目眩すら起こしそうだ。
そんな倫子を一瞥して、雲雀は向かい合うように前に移動して膝をついた。
そして黙って、夢を語るような倫子の顔を覗き込む。
なにもかもじっと見透かす、透明な瞳。
「…羨ましいの?」
その言葉に、倫子は笑った。
「いいや」
それに笑い返しながら、雲雀は小さく呟いて、
「…嘘つき」
キスをした。