AEVE ENDING
「さっき、鍾鬼となに話してたの」
真醍達と別れた後、倫子はたんこぶを作った顔で雲雀を覗き込んだ。
額のこぶに眉を顰めるだけで何も言わず、雲雀は無関心になにが、と返す。
ここは西部箱舟、食堂―――。
少し遅めの昼食をとろうと、同じように正午に食事しそびれて窓口で行列を作ってる生徒達に加わったところだった。
雲雀の姿を認め、注文窓口までずらりと並んでいた生徒達の動きが急に機敏になる。
「オムライス!」
「おすすめA定食!」
「筑前煮セット!」
「カレーライス!」
早口言葉のように交わされる食事注文を耳にしながら、倫子は雲雀の肩に親しげに顎を乗せた。
それを見た周囲のオーディエンス達が、一気に殺気立つ。
それを承知で肩に凭れたままにやりとにやつく倫子に、雲雀は呆れるしかない。
「君は変わらないな、って話」
「なにそれ。お前らも相変わらずじゃん」
雲雀の一言に、倫子が不可解だと声のトーンを上げた。
こんな間近でそんな高い声を出されて、それなのに不愉快にならない自分がいる。
―――変わっていないなんて。
「…そんなことないよ」
僕も鍾鬼も真醍も、アナセスもロビンも、―――きっと桐生ですら。
(相変わらずなのは真醍もだけど)
あれは一旦横に置くとして。
(…僕達は、きっと変わった)
少なくとも自分は、確実に。
橘倫子という存在が、迷いなく自分の隣に在ることに、満足している。
まさか自分が、そんなことを思う日がくるなんて。
「…雲雀?」
小さく儚げな笑みを浮かべる美しい横顔を、倫子は不思議そうな思いで眺めていた。
そして何やら考えこむような顔になると、今度は神妙に口を開く。
「…そんなことねーよ」
その真摯な声に、雲雀は自分の肩に乗る不細工な顔を見つめた。
「変わったよ、私」
憎しみから解放されたなんて大袈裟なことは言わない。
けれど確実に、前よりずっと、光に満ちた道にいると、確信している。