AEVE ENDING





―――殺り合う直前の対峙。

静かすぎる空間を、波音がノイズとなって支配してゆく。

ざわざわと潮風ははためき、怪しかった空色は今にも涎を垂れそうな気配だ。

(最悪のシチュエーション……)

巻き添えはまっぴらゴメンと岩陰に身を潜ませ、倫子は対峙する馬鹿二人を睨み付けていた。

(雨が来たら、逃亡する絶好のチャンス)

けれどあの男達は、きっと互いの命を奪るまでやめはしないだろう。
途中で戦闘放棄なんて真似、きっとしない。

(…なんでかって、なに、あの愉しそうな眼)

自分に立ち向かってくる敵が居ることが、そしてそれを完膚無きまでに潰せることが嬉しくて嬉しくて堪らない、と言いたげな。
頂点に立つ者達の、傍迷惑な残虐な嗜好性。

(なんて迷惑なんだ)

このピリピリとした、少しの綻びから張り裂けてしまうような空気。

ただでさえ雲雀の纏う空気は骨身に応えるというのに、二人が構えた途端、普段のそれとは比にならない程の痛みが倫子を襲っていた。
膨大で強力な力は、弱者の身を意図もなく、断つ。
それは真醍とて同じ。
雲雀ほどではないが、倫子の許容範囲を完全に越えた力がじわじわと空気に染み出している。

(雲雀が戦闘態勢に入っただけでコレなんだから、一緒に闘うってなったら、私、一体どうなっちゃうんだろ…)

影に隠れつつ、己の保身を考えていると。




───ザワリ。


潮風が一際大きくうねる音がした。

一枚の葉が二人の中間地点に舞い落ちる。
まるでそれを合図と照らし合わせたかの如く、その葉が砂に埋もれる前に、二人の影が同時に動いた。

雲雀は一瞬にしてクレーターを跨ぎ、真醍の懐へ目にも留まらぬ速さで飛び込む。
真醍はそれをさせまいと雲雀が間合いより内に入る前に後ろへ跳び、刀を翻した。
自ら間合いに飛び込んできた雲雀に、剥き出しの刀身を一気に振り下ろす。


ギ…。

しかし、鈍い音と共に鋭く研かれた刀身は雲雀の左手で止められていた。
薄い掌に、鋭く磨かれた刀が喰い込んでゆく。

「…へぇ」

けれどそれは、捨て身で止めたわけでは決してない。
掌の表面に薄い高密度の膜を張り、思い切り振り下ろされた刀を鉄の強度まで鍛えたその壁で受け止めたのだ。

誰にでもできる事じゃない。





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