AEVE ENDING






「悪かったなぁ、タチバナァ。俺のためにあんなこと言われる羽目になってよぉ」

わんわん泣きじゃくる真醍に頭を撫でられながら、倫子は事の次第をなんとなく把握し、こっそりと息を吐く。

(…やっぱりなにか言われたのか)

真醍が何故いきなり武藤に暴力を振るったのか。
大方、朝方の浜と同じように余計な一言を吐き捨てたのだろう―――倫子は気にしないのに。

でも。


(私のため、か…)

真醍の行動に、少しだけ胸が温かくなる。

(こんなふうに庇ってもらったの、久しぶりだ)

自然と頬が緩んでしまった。

「なに情けない顔してるの」

猿、ありがとう、と口にする前に、真醍の腕から離れてしまった。

自分の意志ではない。

見れば雲雀の指が、きりきりと倫子の腕を握り潰していた。

「…指、喰い込んでますけど」

軋む腕に、雲雀を睨み付ければ。


(ちょ、なに、その眼…)

ひたりと据えられた眼と空中でぶつかった。

底冷えするようなそれはいつも以上に無感情で、酷く排他的な、「眼」。


───あぁ、この眼は。




「ひば、」
「行くよ」

力の限り引かれた腕に逆らえず、そのまま引きずられるようにして浜を後にする。
背後で騒ぐ子供達の声と、いきなりのことに首を傾げているだろう真醍。

―――それから、横目で見た、朝比奈の傷付いた顔、が。


(…最悪だ)

朝比奈の横で、不機嫌そうな武藤が倫子を睨んでいた。

掴まれた腕が、酷く冷たかった。





< 201 / 1,175 >

この作品をシェア

pagetop