AEVE ENDING
「悪かったなぁ、タチバナァ。俺のためにあんなこと言われる羽目になってよぉ」
わんわん泣きじゃくる真醍に頭を撫でられながら、倫子は事の次第をなんとなく把握し、こっそりと息を吐く。
(…やっぱりなにか言われたのか)
真醍が何故いきなり武藤に暴力を振るったのか。
大方、朝方の浜と同じように余計な一言を吐き捨てたのだろう―――倫子は気にしないのに。
でも。
(私のため、か…)
真醍の行動に、少しだけ胸が温かくなる。
(こんなふうに庇ってもらったの、久しぶりだ)
自然と頬が緩んでしまった。
「なに情けない顔してるの」
猿、ありがとう、と口にする前に、真醍の腕から離れてしまった。
自分の意志ではない。
見れば雲雀の指が、きりきりと倫子の腕を握り潰していた。
「…指、喰い込んでますけど」
軋む腕に、雲雀を睨み付ければ。
(ちょ、なに、その眼…)
ひたりと据えられた眼と空中でぶつかった。
底冷えするようなそれはいつも以上に無感情で、酷く排他的な、「眼」。
───あぁ、この眼は。
「ひば、」
「行くよ」
力の限り引かれた腕に逆らえず、そのまま引きずられるようにして浜を後にする。
背後で騒ぐ子供達の声と、いきなりのことに首を傾げているだろう真醍。
―――それから、横目で見た、朝比奈の傷付いた顔、が。
(…最悪だ)
朝比奈の横で、不機嫌そうな武藤が倫子を睨んでいた。
掴まれた腕が、酷く冷たかった。