AEVE ENDING
「シャワー、浴びて」
あてがわれた部屋へ足早に戻ると、無表情の雲雀は引きずってきた倫子をシャワールームへとぶち込んだ。
「五分で上がっておいで」
え、五分?
わけも解らず血濡れた服を脱ぎ捨てる。
傷跡だらけの腹には、薄い繊維を通り越してあの男の血が滲んでいた。
もう生きてはいない男の顔がじわりと思い出されて、彼らが発していた言葉を走馬灯のように思い出す。
『お前は神になるのだよ』
まるで暗示のように。
『手を伸ばしてみろ。きっとお前は、神の心臓を掴むことができる』
或いは、自らに言い聞かせるように。
―――そして最期は。
『神の器を狙う者は、すぐ近くに』
なにそれ。
「どういう意味だよ…」
神、って「雲雀」のこと?
神の器、…雲雀、か?
(雲雀を狙う者が───)
シャワーのノズルから溢れ出る柔らかな温水が、穢れた身体を洗い流していく。
それでもこの身体は、汚いまんまだ。
(近くにいる───)
何故、あの男は私にそう告げたのだろう。
なにを、考えていた?
死に際に仏心でも出したつもりだろうか。
でも、近くって、どのくらい近く?
(───橘)
頭からシャワーを浴びている最中に、雲雀の声が脳髄に響き渡った。
考え込んでいた上、素っ裸だということもあって壁に頭突きをかますくらいには慌てる。
(……なにさ。シャワー浴びてる女に話しかけるのやめてくんない。変態)
(今すぐシャワー室の壁を破壊してもいいんだよ?)
(やってみろやこのセクハラ大魔神が)
言ってはみるが見られるのは勘弁だ。
蛇口を締めて、早急にバスタオルを体に巻き付ける。
血の臭いはそう簡単には取れなかったが、身にまとわりついていた気色悪い感覚は拭われた。