AEVE ENDING






目を丸くしたまま硬直している武藤をよそに、雲雀は小刀の軌跡を無言で辿った。

行き着いた視線の先には、真醍。
オプションとして子供を一人肩車した状態で、眼光鋭く武藤を睨み付けている。

少し離れた場所で口論を続けていた朝比奈と倫子も、松の木に刺さる小刀に呆気に取られて目を丸くしていた。
あと数ミリずれていれば、あの小刀は松ではなく武藤の鼻を真横から串刺しにしていただろうことに対してだ。

つまり殺意も露に投げつけられたことになる。



「真醍」

雲雀が呼べば、武藤を無言で睨み続けていた真醍が顔を上げた。

「…てめぇ、」

低く吐き出された声は怒気を含んでおり、武藤は訝しげに首を傾げている。
武藤にしてみれば、この島のトップのご機嫌を損ねるような真似はなにひとつしていないのだから、心当たりはない。
責めたのはあくまで、役立たずのイヴ―――橘倫子なのだから。


「島民の命の恩人に何言ってくれとんじゃコラァァアアッ!」

バキィッ…。

ヤクザ再び。
怒りに任せ武藤をぶん殴った真醍を、倫子はそう評価した。
図体と腕力だけは凄まじい真醍に殴られた勢いで、武藤は後ろの松林に吹き飛んでいく。

「武藤!」

朝比奈が叫ぶ。
松の幹で背中を強打した武藤は、力なくずるずると膝を着いた。

「何事?」

事情を把握していない倫子が、真醍と武藤、それから説明を求めて雲雀を見るが、雲雀は冷ややかな視線を武藤に向けたまま動かない。

そんな武藤に、朝比奈が駆け寄る。


「…大丈夫ですの?」

砂浜に尻をつけ、膝を曲げたまま項垂れて動かない武藤を朝比奈が覗き込む。

「いてぇ…」

声は掠れているが、しかし大事には至らなかったようだ。
武藤の口許に浮かんだ皮肉な笑みに、安堵する。

「当たり前ですわ。雲雀様の耳を汚すからです」

安堵のついでに皮肉を吐いてやれば、武藤も乾いた笑いを吐き捨てた。
それにほっと息を吐く朝比奈を横目に、ゆっくりと立ち上がる。

武藤を投げ捨てた本人を見やれば、涙目で倫子に抱きついていた。


「タチバナァ~ン!」
「ぎゃあああ折れるううう!」

ぎゅうぎゅう抱き締められている倫子が手足をばたつかせるが、真醍は離れようとしない。

面白がってそれに群がり騒ぎ立てている子供達と、それを冷ややかに見据える雲雀。




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