AEVE ENDING





けれどそれで、なにが解決するというのか。
それなのに、叫ばずにはいられない。


『…っ、…!』

壁を蹴りつけた体勢のまま、ぐ、と俯く。
怒りのあまり声も出ないと言うように、唇を噛み締めて。

今にも血が滲んでいくような痛々しさが、悲しい。

それを見た奥田が、困ったように笑う。
やはり、出来損ないの笑顔で。


『相変わらずなぁ、お前は…』

研究所に放り込まれた時から、牙剥き出しのクソ生意気なガキんちょだった。

馬鹿馬鹿しい限りだが、バカな子に向ける愛しさなんぞ込み上げて、奥田は俯いた倫子の頭をくしゃりと撫でた。

傷みに傷んだ固い髪が、彼女らしくて。


『…みーちこ』

昔と同じように囁けば、素直にゆっくりと顔を上げる。
表情は相変わらず仏頂面だが、これは不本意でも、奥田に従おうという時の顔だ。

『…雲雀は、どうなるの』

ぽつりと吐き出された言葉は、真意を求める声。
この期に及んで、なにをあの男の心配など―――。


『…組織は、彼のカリスマと能力を狙ってる。キタネー大人の欲のための、つまんねー道具にするために、な』

道具。

奥田の投げやりな言葉に、倫子はそれを吟味するように唇を舐めた。

本当に、そんなもので納まるのだろうか。

(…あの男が?)

慇懃な男の微笑は、他人への屈服を赦さない。

『利用って、リスクが高すぎるんじゃないの?』

あの男は、もし飼い馴らせるならばきっと最強の兵器になる。

しかし、飼えなければ。


『懐に爆弾を抱え込むようなものなんじゃないの?』

なにせ、あの「雲雀」だ。
いつ爆発してしまうか解らない、地球を滅ぼすほどの力を持った「アダム」。


『…あいつが「修羅」と崇められているのは、力だけじゃないよ?』

あの凶暴な性質は、そう簡単に飼い慣らせるものじゃない。




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