AEVE ENDING
「自分の子供、か…」
その時、彼女の声色が少し低くなった気がした。
カワイイダロウナー。
そして俯いたまま、間抜けな声でそう言い放った彼女にやはり違和感を感じるが、追求はしない。
「…ねぇ」
代わりに。
「浜で、なにを語ろうとしていたの」
本当に、追求したかったことを。
「…なにが?」
倫子はパンを口に含みながら、先ほどとは打って変わってこちらを睨み付けてきた。
まさか子供の話が伏線だったとは思いもよらなかったらしい。
ゆるく構えていたぶん、誤魔化すこともできず顔が緊張に固まっている。
「真醍の部下が現れなきゃ、君はなにかを口にしていた筈だよ」
雲雀と真醍に追求されて、渋る口を開き掛けた時に邪魔が入ったのだ。
「…保健医は、北の島に行ったことで収穫があったと、そう言っていたけど」
雲雀の伏せ目がちな睫毛が、真上の照明で影を作っていた。
追及しているには、随分と穏やかで静かな表情だ。
(長い睫毛…)
その睫毛に真実すら隠れてしまえばいいのに。
けれど彼は、そんな生易しい生き物じゃ、ないから。
「一番収穫があったのは、君なんじゃないの?」
睫毛が近付いてくる。
その真下に位置する青味がかった深く黒い目は、今は軽く伏せられたまま、こちらを覗き見ていた。
―――嘘が、通じない。
「…別に、大したことなんか、なにも」
近づいてくる真実の眼から逃れるように顔を逸らす。
酷く腹立たしげに歪められた倫子の表情に、雲雀は満足げに、そして追い討ちをかけるように、柔らかく、ほぐすように、笑んだ。
「…話したくないの?無理に聞き出したって、構わないけど」
なにせこちらは、君より力が強いから。
囁かれた言葉は、倫子の侵害を宣誓するもの。
「…っ、」
我慢ならなかった倫子は、勢いのまま雲雀の顔を殴った。
「…いっ、」
―――が、振り上げた腕をいとも簡単に拘束され、そのままギチリと掴み上げられる。
あっさりと自由を奪われた倫子は、その無理な体勢に痛みを訴えた。
しかし、離されることはない。
「話せばいいよ」
間近に引き寄せられたその端正な顔はやはり美しく、それなのに。
―――まるで。
「…絶対、嫌だ…!」
そんな、責め立てられるような、眼で。