AEVE ENDING
「…ねぇ、」
いたいうまいいたいと嘆く倫子の横で、雲雀はふと表情を改めた。
その変化に気付いたのか、倫子はフランスパンをスープに浸したまま、じ、と雲雀を見上げている。
見上げる眼は真っ直ぐ、こちらの意図を否定していた。
―――或いは畏れているのか。
(楽しみを潰してやるのも一興だけど…)
「…子供、好きなの」
しかし口を突いて出た言葉に、雲雀自身が呆れた。
その問いかけに、目を丸くした倫子の視線を不愉快に受け止める。
(こんな下らないことを訊いてどうする…)
訊きたいのはそんなことじゃない。
そんなことじゃ、ないのに。
しかし、質問の意図を理解した倫子は満面の笑みを浮かべ意気揚々と答えた。
「好き。めっちゃ好き。私、兄弟多かったから小さい子の面倒はよくみてたしね」
にこにこと笑う倫子に、あぁ彼女には、暖かい家があるのだと感じさせる。
「私、長女なんだけどさ、下に弟と妹が五人居てね、近所でも有名な大家族だったわけよ」
雲雀にとって彼女の身の上話などはどうでもいいのだが、その無邪気ではしゃいだ顔に、何故かなにも言えない。
(お節介なわけだ…)
妬んでいるわけではないのだけれど。
ただ、少しばかり羨ましいような気がしないでもない。
自分はきっと、彼女が語るようには語れないから。
「可愛いよね、子供。他人の子でもあんなに可愛いんだから、自分の子だったらどれだけ可愛いだろうって思わね?」
同意を求められても。
「さぁ」
「…なに、雲雀。あんた子供を可愛いと思ったことないの?」
「子供どころか、なにかを可愛いなんて思ったこと一度もない」
「…あわれー」
「馬鹿にしてるの」
「いっ」
抓られた頬をさすりながら、倫子はフランスパンを食べ続けている。
「でも、雲雀の子だったら確実に可愛いのが産まれてくるよ。そん時は抱かせてね」
唐突に飛躍した話題に、雲雀は眉を寄せる。
「いつの話してるの…」
「将来の話」
「…別に僕の子供じゃなくても。いくら君でも、いつかは産んでるんじゃない」
「……なにその、いくら君でも、って」
雲雀の言葉に噛みつきながら、倫子は考えこむように少し俯いた。