AEVE ENDING
「…雲雀、ありがと」
存外素直に口から出てきた礼に、雲雀はちらりと一瞥をくれるだけ。
それから、浅く溜め息。
「学習したらどうなの。毎回毎回、耳障りったらないよ」
それは倫子にとっては心外である。
「私、悪くねーじゃん。突っかかってくるアイツに言ってよ」
(大体、あんたとペアってだけで僻みの対象なのにし)
「責任転嫁の前に、もうちょっと大人になったらどう?」
雲雀の呆れきった目が、たったいま助けられただけあって妙に胸に響く。
(…正論だ。腹立つ)
「じゃあ雲雀、特訓に付き合ってよ」
パートナーだろ。
半分冗談、半分本気で拗ねたように言い捨てた。
勿論、快諾されるとは思っていない。
ただの場つなぎの台詞。
「いいけど、僕は厳しいよ?」
にたり。
背後で稲妻でも走っているのではないかと錯覚するほど不穏な微笑に、倫子は口許をひきつらせた。
(え、まさかそこでオーケーしちゃう?予想が大幅にズレたんですけど。日本とブラジルぐらいズレてるんだけど)
予想外の展開である。
「…いや、あの、付き合ってもらうだけで結構なんで。別に指導とか、ほんと要らないっていうか…」
こんな、人を貶めて悦ぶようなサディストに指導を請うなどまっぴら御免だ。
お優しく親切、かつ的確なアドバイスだけでいい。
「なに言ってるの?イヴなんて呼ばれて、それに甘んじるつもり?」
一歩前を歩く雲雀は淡々と吐き捨てる。
(…いちいち、傷付くこと言ってくれるよ)
「それはいやだ」
素直に、雲雀の言い様に応えれば。
「なら、死にかけるくらいの努力をしたらどう?君が噛みつかれて噛みつき返すのは、図星を当てられて腹を立てるからでしょ」
すっぱり切られた。
(…なんか今日は、正論ばかりで言い返せない)
頑張って頑張って頑張ってきたつもりだけれど。
(…足りないよなぁ)
「弱い」と自覚があるからこそ、そこを指摘されて腹立たしくなるのだから。
(やっぱり雲雀の言うとおりだ)
例え自らが望んだ場所でないにしろ、こうなってしまえばもう、やるしかないのだから。