AEVE ENDING
それを遠目で見ていた倫子は、素直に感心していた。
「すげーや朝比奈。今までが今までだったから会長だってこと忘れてた」
失礼極まりないが、一応褒めている。
「そうだね」
感嘆する倫子の隣でやる気なく相槌を打った雲雀は、既にそちらから視線を外し他の移住区を観察している。
偽善的な親切に興味はない。
その場凌ぎの無責任な言葉にも。
そんなことより、このセクションの真意を見極めなくては。
(…橘が言う通り、半人前のアダムが下手に手を出したところでただの応急処置にしかならない)
それはあくまで一時的なものであり、いつかはまたもとの姿に戻る。
ならばこのセクションは、無駄な行為といえるのではないか。
希少な人手を、その場凌ぎに使うこと自体、効率が悪いように思える。
では何故、箱舟連盟は合同セクションにこの場を選んだのか。
疑問が疑問を呼んでは山積みになる。
この合同セクションは、はじめから明らかにおかしかった。
北の島の件についても、この貧困エリアでのセクションについても。
なにより───。
雲雀は思案を巡らせたまま、自分の前に立つパートナーを見た。
ペアはあの保健医の男が仕組んだにしても、これではまるで。
(…教えようとしているみたい)
僕に、「なに」か、を。
(では、誰が?)
箱舟連盟の実質頂点に立っているのは、雲雀が所属する東部箱舟の代表、幾田桐生だ。
白濁の左目を持つキチガイの顔が雲雀の脳裏に浮かんだ。
『余計な詮索は、無用』
彼は確かにそう言った。
『そう思わせていればいい』
誰に、そう思わせたいのか、あの男は。
(…きな臭い)
一番臭うのは、パートナーの橘倫子ではあるが。
「…橘」
考えても無駄だ。
結論を出すには、まだピースが足りない。
「行くよ。なにをすればいいか、見極めなきゃ」
巻き込まれているのは恐らく、君と僕だろう。