AEVE ENDING
(…こいつと並ぶと、それだけで重圧が掛かるから、)
倫子はぼんやりと考えた。
その痛みを会話で誤魔化しているのも、また事実だった。
ひたひたと隣から空気を滲ませて伝わる痺れるような気配は、雲雀を知れば知るほど、強くなる一方。
―――今なんか、特に。
ゲートを潜った時点でちらほら点在していたアダム達の視線を独占している。
しかもあろうことか、貧困エリアの女性達の視線まで。
(注目せずにはいられない存在、か…)
その稀な容貌に加え、是が非でも視線を絡めずにはいられない絶対的な存在感。
(無いようで在るもんだから、嫌味でもないし)
強く、惹き寄せる。
人が大切にしているひとつの塊に、直接語りかけてくるような魅力。
賎民が王者を羨望の的として恐れ、憂い、憧れ、そして崇め奉るように。
(…贅沢な奴)
容姿に能力にカリスマに――捻れ曲がった性格は憐れむべきだが――欠けていない、完成した「形」。
けれどだからこそ、一見しただけでは「人間」に見えない。
ちらりと、背後に立つ雲雀を盗み見る。
綺麗な稜線を描く鼻に、柔らかな頬の線。
緩く巻かれた長い睫毛はそれだけで物を言うように繊細だった。
その薄く柔らかな唇は、きっと人を罰する時でさえ、美しく囀るのだろう。
(…及ばない。なにもかも)
―――『神』を造ろうとしたのだと、彼らは言った。
彼らは雲雀を『神』と、崇めていた。
───神は唯一無二で在るべきなのに?
この恐ろしく美しいまでに純粋な存在は、ひとつ在ればいいのだ。
それこそ、同じ神はふたつと要らない。
(それなのに何故、私は選ばれたのだろう)
―――神は神で、在る筈なのに。