AEVE ENDING
「…君と闘ってみるのも一興だけれど、今日はもう帰りなよ」
強引に、男が作り掛けていたテレポートの綻びを引き寄せて、新たにその空間を繕い直す。
その歪んだ空間の歪みに、雲雀は無理矢理、男を引きずり込んだ。
男もそれなりに抵抗しているのか、摩擦しあう静電気が雲雀の腕を苛む。
皮膚が割れて血が弾け飛ぶが、しかしそんなことは気にもとめない。
バチリバチリと高く鳴く空気の狭間に、男のその痩身が飲み込まれていく。
片腕に倫子、もう片方は空間の狭間に半ば飲み込まれるかたちで、雲雀は巨大な能力を惜しげもなく解放した。
「じゃあね」
とうとう最後に、男の左足の踵が消えた。
既に男の抵抗がなかったのは、意志に反するテレポートはその身体にとてつもない負担を掛かるからだろう。
まさしく身を引き裂くような痛みに細胞を分解され、再構築される不快な感覚。
静かな男の代わりに、発せない声の代わりに、頭皮の蛇が雲雀を睨む。
それに微笑を返しながら、雲雀は空間の歪みから手を乱暴に引き抜いた。
施術者を無くした空間のポケットはみるみるうちに消え失せ、暗澹とした暗闇に再び静寂が戻る。
―――途端、先程まで気にも止めていなかった火種の音が耳に障り、ひたりと冷えた空気が雲雀の剥き出しの頬を刺した。
それは出来たばかりの腕の傷口にも、滲みる。
見上げた夜空に、重い暗雲が垂れ込め、酷く気分を憂鬱とさせた――そんな繊細でもないのだが。
(…接点は幾らでも在るのに、その口から漏れる情報が断片的過ぎる)
島の研究者に始まり、あのいけ好かない保健医、一応自分の両親である男女に、双子、そして蛇の男。
(どうしても、どこへ行っても、橘が付き纏う。なにコレ、呪い?)
この不愉快な不満足感。
あまりに自分に馴染まない感情。
(こんな無礼者に、なんでこの僕が)
振り回されなければならないのか。
(…クソ橘)
あぁ、なんだか口振りまで似てきた気がする。
ますます腹立たしい。