AEVE ENDING
「見たところによると、貴方は彼女の秘密を知らない」
男の薄い唇が倫子の額に寄せられる。
妖しく吐き出された呼気に、倫子の乱れた前髪が揺れた。
挑発的なそれに、雲雀の片眉がひくりと上がる。
(…僕の物に手垢を付けられるのは、気に喰わない)
雲雀の表情から、笑みが消えた。
―――バヂリ。
高い音を立てて雲雀の指先に集中していたそれが放たれる。
放射された白い熱が一直線に男の鼻を狙っていた。
「……っ、」
それを当たる寸ででかわし、男は身を翻す。
それと同時に、男の周辺の空間が歪んだ。
テレポートで逃げる気か。
「待ちなよ」
その背中に、雲雀が瞬時にのしかかってきた。
多少の距離はあった筈だが、それをモノともしない身体能力。
片膝を剥き出しの肩甲骨に引っかけ、男の背におぶさるように右手で男の顎を上向かせる。
嘶く馬の背に乗り上げるような形で体重をかけ、男を背後に倒す───が、男はとっさに倫子を投げ上げ、身を軽くするとふわりと体勢を垂直に立て直した。
しかし放り投げられた倫子を片手であっさりと受け止めると、雲雀は隙もなく男の喉に掴み掛かる。
「…ぅぐ、」
先程の倫子のように、締め上げられる男の細い気道。
「痩せてるね…。簡単に折れる」
雲雀が嗤う。
言葉通り、きしりと男の首骨が鳴いた。
「…お前達の主君とやらは誰?何故、僕や橘を狙う?目的はアダムを頂点にのしあげること?」
首を絞めあげられながらも微笑を消さない男に、雲雀は矢継ぎ早に問い掛けた。
男がそれに答えるわけもなかったが、雲雀はただ常套句を口にするように問い続けている。
腕の中の倫子は、動かない。
それを一瞥して、雲雀は声色を変えた。
「…橘は、僕のなに?」
雲雀のその問いに、男は絞め上げられた喉でくつくつと鳴いた。
首を絞められては、語れませぬ。
男の眼がそう物語るが、雲雀はその手を緩めない。
「僕を得たいなら、よそ見はしないことだ」
―――伝えておきなよ、君の主君とやらに。
口角を上げた雲雀に、男の眼が見開かれる。
喉を絞める指は相も変わらず緩まず、しかし体を圧迫されるこの感覚、は。