AEVE ENDING
「変態」
それを読み取った雲雀の声と同時に、ぐるりと視界が廻る。
これは倫子の体が回されたわけではなく、意識的な問題だった。
(うぇ、吐きそう……)
ビリビリ。
足の指から脳天に痺れるような電流が走る。
神経がびくびくと震えて、既にこの体は自分の物ではないような気すらしてきた。
(…幽体離脱ってこんな感じかな。あんまり良いもんでもないや)
ただもう、なにもかもが麻痺して、意識は完全に混濁している。
(研究の時に、逆戻り…)
まるで実験体だ。
(あぁ、でも、不快じゃないのは、雲雀だからかな…)
だって私と雲雀は、実はおんなじだったりするわけだし。
「…っ、」
薄らと開けていた視界が、急に開けた。
それこそ灯りひとつない真っ暗闇のトンネルを、急激に抜けたような強烈さで。
―――ひくり。
自分の腕が、左腕が、勝手に筋肉を収縮させて動いている。
脳はそんな命令出してないのに、まるで他人の腕がくっついているような。
(…きもちわるい)
ゆっくりとその腕が雲雀が座るソファに伸びた。
引っ込めたいのに、まるで言うことを聞かない腕は、倫子であって倫子じゃないのか。
(きみが、わるい…)
いやだ。
意志なんか関係なく、しかも意識はあるまま操られている。
しっかりと目を開けて、動いているのは倫子の体なのに、動かしているのは倫子じゃない―――この光景は、酷く不気味だ。
まだ雲雀だから信用できるけれど、これがもし、雲雀じゃなかったら?
(……気持ち悪い。そんなの、絶対にいやだ)
私の体で私の意志で私の意識で、それを勝手に使おうとするなんて。
「やだ」
気付いたら、思わずそう口にしていた。
(……喋れた、)
倫子のその言葉に、雲雀が小さく溜め息を吐くと、勝手に動いていた腕からかくりと力が抜ける。
糸を切られた、人形みたいに。