AEVE ENDING
「なにをもたもたしてる!難しいことなどなにひとつ言ってないぞ!」
梶本の怒声が浜中に響き渡る。
拡声器もなしによくもそこまで大きな声が出るものだ。
「ほーらほらほら、頑張ってー君たち」
更に頭上から響く気の抜けた声は保健医、奥田のもの。
現在、セクションの一環として、ペアに分かれて海洋清掃中である。
指揮、監督、救護にミスレイダー、梶本、奥田。
指揮下では、二百余名のアダム候補達が活動に勤しんでいる。
東部の生徒達は浜辺に仁王立ち、監督さながらにサイコキネシスで海中のゴミを引き上げているが、西部の生徒達は手足を海水に漬けて黙々と作業している。
朝比奈と武藤は西部東部総合の指揮官に任命され、それぞれの生徒達の手助けに徹していた。
合同セクションに参加しているアダム候補生全員が清掃に没頭するなか、浜辺に腰掛けチェス板を相手にゲームを楽しんでいる者が、ひとり。
それは勿論、東部が誇る一生徒であり、最年少史上初で「修羅」の称号を与えられたアダム候補生、雲雀である。
その膨大で強力な能力を、おおよそ環境整備に傾ける気はないらしい。
そして、そんな彼に文句を言う者は誰ひとりいない。
「おいこら、クソスズメ」
───訂正。
誰もが焦がれるカリスマに文句を垂れる人間が、最近、ひとりだけ現れた。
「そのすかした顔がムカつく」
仁王立ちで腰掛けている雲雀を見下ろす西部箱舟に在籍する女生徒───倫子である。
一見ただの女子ではあるが、雲雀のパートナーであり彼とペアを組み唯一生き残っているゴキブリ並みの生命力を持つ落ちこぼれアダム候補生だ。
「見なきゃいいでしょ」
そんな倫子に雲雀はチェス板から視線を上げることもせず言い放った。
「清掃しろよ!バカスズメ!バカ!」
「バカを二回言う必要があったの」
「一回目のバカはスズメに掛けてたんだよ!」
「あぁ、そう。言いたいことは解ったから早く目の前から消えてくれる?邪魔」
いけしゃあしゃあと言い捨てる雲雀に、倫子の目元がぴくりとひきつる。
チェスを見たまま、雲雀は顔も上げようとしない。