AEVE ENDING
「…今、なんの時間か解ってる?」
「…さぁね」
些か倫子の声が一オクターブ低くなっているが、そのような些細な事を雲雀が意に介する筈もない。
わざとらしく肩を竦めて見せた雲雀に、倫子の怒りに熱を帯びた。
「サイコキネシスを使った悪条件での奉仕作業を目的とした海洋清掃中なんですけど!そんでこれである程度単位取らなきゃ罰ゲームが待ってんだよ!」
罰ゲームの発案者が奥田なだけに嫌な予感しかしない。
必死の説得を試みる倫子だが、当の雲雀は涼しげな表情を崩さないままチェス板から目を離そうとしない。
「罰ゲーム、ね。馬鹿馬鹿しい」
「馬鹿馬鹿しいのは重々承知なんだけどね、さすがにあのバカが発案した罰ゲームはごめん被るよ!」
深く溜め息を吐き出しながら、倫子の視線が奥田を一瞥した。
それを不愉快に感じながら、雲雀は顔を上げた。
光を吸収した重い雲を背景に、倫子の不機嫌な顔が再びこちらを向いて窺っている。
(…不細工、)
慇懃無礼は雲雀の十八番とはいえ、それを口にはしない。面倒だからだ。
「どうせやるのは君だけでしょ」
そんな雲雀の形の良い唇が吐き出した一言に、倫子の眉が更に寄る。
「…いや、なに言ってんのお前。パートナーのお前も道連れだよ」
「確かに他のペアならそうだろうけどね。生憎、僕にそんな趣味はない」
「私だって趣味じゃねえよこの焼き鳥が!」
怒鳴り散らす倫子を横目にしながら、雲雀はこの会話に終止符を打つように海に向けかって手を差し出した。
「……?」
その不可解な動きに、倫子が首を傾げる。
「ひとつ、教えてあげる」
溜め息混じりに吐き出された雲雀の言葉と共に、───地面が揺れた。
ゴ、ゴゴ…。
「…っ、」
足裏から響く地鳴りのようなものが脳天を揺さぶり、それは徐々に強くなっていく。
(な、にを)
目下、清掃作業をしていた生徒達も突然訪れた地響きに騒ぎ始めた。
奥田や梶本、ミスレイダーの三人は、地響きを及ぼしている力の波動を感じ取ったのか、雲雀を一瞥しつつ見守っている。
「…雲雀?」
右手を海に翳したまま、涼しい表情で波立つ海面を眺めている雲雀に対し、事態を把握しきれていない倫子は及び腰だ。