AEVE ENDING
産業界では屈指の実力国で、その発展は第一中華人民国よりも目覚ましい。
世界的地位も日本と肩を並べ、今では「中国」といえば第二中華人民国を指すほどになった。
その大国から。
「留学生?」
「はい。以前から話はあったようですが、この東部西部合同セクションを機に、実現と相成ったそうです」
距離的にも近い第二中華人民国との国交は、日本にとって最重要項目になる。
(…大方、彼らも関わっているのだろう)
戸籍上の父と母を思い、雲雀は浅く息を吐く。
(また、なにを企んでいるのか)
「それで一体、僕になにをしろっていうの?」
問えば、朝比奈は戸惑いを見せた。
なにかしらの気遣いか、話すことを躊躇うような内容なのか。
朝比奈は小さく俯くと、雲雀を気遣いげに見やる。
(…不相応な、眼)
以前にそんな眼を向けられたら、きっと相手が女だろうが子供だろうが力ずくで地に伏していただろうに。
(誰の影響だろうね、全く)
きっとこんなにも心情が穏やかなのは、それ以上の非礼を涼しげにやってのける馬鹿がいるからだ。
頭が痛い。
今頃、仕置きをサボっているだろうパートナーを思い出し、渋面を作った雲雀に朝比奈は意を決して言葉を紡いだ。
少し、辺りが暗くなる。
見れば、珍しく薄雲を通していた月がいつものように完全に雲に隠れてしまっていた。
「…雲雀様は、「鍾鬼」、という人物をご存知でしょうか」
───鍾鬼。
中国では、疫病神を追い払うとされている神の名だ。
「あぁ…、何年か前、話題になったっけ」
雲雀が既に「修羅」の称号を手にしていた時。
中国に、産まれながらに神の名を持つアダムがいると、幾田から聞いた。
「第二中華人民国が誇る、若く才能溢れるアダムの名ですわ」
その力はまさしく強力で、鮮やかで目覚ましく、そして揺るがないと聞く。
「当時、同世代のアダムを皆殺しにしたとか」
浅い記憶を呼び起こす。
記憶の語り手は確か、幾田だった。